障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

25年11月21日更新

2025年「すべての人の社会」11月号

2025年「すべての人の社会」11月号

VOL.45-8 通巻NO.545

巻頭言 すべての人が「その人らしく」生きるために


JD理事 斉藤 秀之


 

 NPO法人日本障害者協議会(JD)が掲げる「すべての人の社会」という理念は、私たち理学療法士が日々目指している社会像と深く重なっています。すなわち、障害の有無にかかわらず、すべての人がかけがえのない個人として尊重され、互いに人格と個性を認め合いながら、地域の中で安心して暮らし続けられる共生社会の実現に向けて、私たちは理学療法の力で支援を続けています。

 現在、本会では「急性期と在宅における理学療法の充実」と「地域包括ケアシステムの深化と推進」を念頭に、国民の健康と福祉の向上に資する事業を進めています。2024年度の診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス報酬の同時改定では、急性期から慢性期まで一貫した支援体制の整備が求められ、理学療法が公的保険制度の中で果たす役割の重要性があらためて認識されました。特に、急性期病院での理学療法の意義が制度上明確に位置づけられたことは、大きな前進であると考えます。医療保険における疾患別リハビリテーションの評価や、介護保険における生活機能向上のための個別リハビリテーションの質的向上が進み、今後は医療・介護の複合ニーズを持つ85歳以上の高齢者への持続的な支援体制が強化されていくなかで、理学療法士の果たす役割はますます大きくなると予測されます。

 こうした制度的な後押しを受け、理学療法士は、退院後の在宅生活への移行支援、介護予防、通いの場の支援、生活支援コーディネーターとの連携、地域ケア会議への参画など、地域における役割がさらに広がっています。特に障害のある方に対しては、身体機能の回復・重度化予防にとどまらず、就労や社会参加の支援においても、職場環境の調整、リハビリテーションテクノロジーの活用、関係機関との連携など、復職に向けたより多面的な支援が求められます。理学療法士が「社会との接点を支える専門職」として機能する事例も増えており、その活動領域は着実に拡大しています。

 また、「健康づくり」や「フレイル予防」への理学療法士の関与も広がりつつあり、公的保険制度の枠組みを超えて、予防から生活支援までを一体的に担う専門職としての期待が高まっております。医療・介護・福祉を横断し、切れ目のない支援を実現することこそが、すべての人の「その人らしい暮らし」につながるものと私たちは信じています。

 今後も本会は、全国の理学療法士とともに、制度の的確な運用と新たな制度設計、そして職能の発展を通じて、地域社会に貢献していきます。JDをはじめとする関係団体の皆さまと連携し、「すべての人の社会」の実現に力を尽くします。

視点 北欧の権利と義務          


JD副代表 薗部 英夫



 北欧・スウェーデンでは、知的障害のない子らは基礎学校(日本の小中学校)に学び、知的障害のある子らの多くは「基礎特別支援学校」で学んでいる。インクルーシブ教育の実情を見たいと、ストックホルム近郊の2つの自治体で基礎学校併設の基礎特別支援学校・特別支援高校(2018年)を、「音楽やスポーツ専科」の基礎学校に併設された基礎特別支援学校(2019年)を訪ね、地域のなかでぶ厚い支援と学ぶ環境の整った現場を見てきた。

 一方、知的障害のない子らの学ぶ通常の学校が大規模化する中で、不適応や不登校の子らも増えていると聞いて、コロナが明けた2023年、2024年と知的障害のないアスペルガーの子らの学ぶ「リソース学校」(7人ほどの小規模クラス)を訪問した。さらに、今年は「重大な暴行、違反、長期的な問題行動などの事件を起こした」子らが学んでいるという「緊急学校」を視察。ここでも強調されたことは、「子どもたちは授業を受ける権利、学ぶ権利がある」ということだった。

 スウェーデンには以上の学びの場に加えて、「特別学校」がある。ろう児は「特別学校」で学ぶ。視覚障害のある子は、ほとんどが基礎学校で学び、特別教育庁(国)が(地方組織とともに)、子ども個人や学校に必要な支援(教員派遣や教材教具調整など)をしていると聞いた。昨年訪問した国立の言語障害児の特別学校で、盲ろう児の学ぶ学校が「全国で一校、古都・オレブロにある」と聞いて、交渉を重ね、訪問が実現した。「盲ろう」という障害は、コミュニケーション、情報取得、移動、社会参加などに大きな困難がある。障害者権利条約は、「盲人、ろう者、盲ろう者」への教育保障を明記し、日本政府に改善を勧告(総括所見)している。

 ストックホルムから西へ200キロ。バスで3時間半。オースバッカ特別学校を訪ねると、副校長と2人の手話通訳者、3人の教師と1人の学校ソーシャルワーカーが歓迎してくれた。

 「特別学校」としてのろう学校は全国に5校ある。言語障害児の特別学校は3校。そして、このオレブロの街には、「ろう重複」「盲ろう」児の学ぶオースバッカ特別学校と、視覚障害に知的障害など重複障害児の学ぶ特別学校がある。

 オースバッカ特別学校は、1964年に設立。現在12人の生徒に3人の特別教員、16人の教育支援アシスタントの体制で運営されている。ろうや難聴で知的障害のある子、ろうに知的障害のある自閉症や他の障害のある子らが学んでいる。現在盲ろうの子は1人。過去には数人の卒業生がいたそうだ。同じ敷地には、知的障害のないろうや難聴の子らの特別学校・ブリギッタ学校もあった。135人の生徒が160人のスタッフと学んでいる。手話で学ぶ欧州でもっとも大きな学校だそうだ。共通言語は手話とスウェーデン語。学童保育もある。寮は市内に3つあり、タクシーを使って通学している。「卒業後は?」と聞くと、「ブリギッタ学校の子らは、手話で学ぶことのできる高校へ。オースバッカ特別学校の子らは、手話で学べる特別支援高校(4年制)や自治体が運営する日中活動支援機関へすすむ。社会の一員として参加し、達成感を持てるように」と副校長が答えてくれた。

 今回の訪問でスウェーデンのインクルーシブ教育の全貌を把握することができた。障害者権利条約にある「障害者が、その人格、才能及び創造力並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること」、それを実現すべき教育の目的として、すべての子どもたちには学ぶ権利があり、国や自治体はそれを保障する義務があるとしている。

 扶養義務制度について、通訳兼コーディネーターのサリネンれい子さん(ストックホルム在住の教師)に聞いた。「子どもが18歳になると扶養義務はなくなります」。日本では3親等までの「扶養義務」が生涯つづく。この違いが「公的責任」の水準に直結している。

 19度目の旅を終えたが、北欧に学ぶことは多い。

2025年10月の活動記録


世界情勢 アフガニスタンの障害者事情 3

Parasto Zafari(ムハマディア大学ジョグジャカルタ校 経営大学院修士課程)




新加盟団体の活動 放課後等デイサービスの現状と課題

真崎 堯司(一般社団法人全国放課後連 理事)




連載 出かけよう!おとなも読みたい えほん・児童文学の時空旅

第24回(最終回) 障害のある人の問題は自分の問題、みんなの課題

品川 文雄(発達保障研究センター前理事長 / 元小学校障害児学級教諭)




連載 戦後80年・戦争と障害者 (2)

「聾唖の産業戦士」――聴覚障害者

林 雅行(ドキュメンタリー映画監督・作家)




連載 優生保護法問題の全面解決に向けて

第5回 日本精神衛生会の調査と謝罪

齋藤 有紀子(北里大学医学部附属医学教育研究開発センター 医学原論研究部門准教授)




連載 投票バリアフリー 第7回

NHK「みんなの選挙」6
山梨県で“視線”を使い1票を実現

立町 千明(NHK報道局政治部)




私の生き方 第90回

上間 祥之介さん(沖縄在住)




トピックス・インフォメーション・読書案内


いんふぉめーしょん 

JDF全国フォーラム 障害者権利条約をめぐる世界の動向と国内課題~次世代への取り組み




賛助会員大募集中!
毎月「すべての人の社会」をお送りいたします。

■個人賛助会員・・・・・・・1口4,000円(年間)
■団体賛助会員・・・・・・1口10,000円(年間)
1部300円(送料別)からお求めいただけます。

▼お申し込みは下記JD事務局へメール、電話、FAXなどでご連絡ください。
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 日本障害者協議会
TEL:03-5287-2346 FAX:03-5287-2347

○メールでのお問合わせはこちらから office@jdnet.gr.jp
○FAXでのお申込み用紙はこちらから 【賛助会員申し込みFAX用紙】

※視覚障害のある方向けのテキストデータ版もございます。
※ご不明な点はJD事務局までお問い合わせください。



フッターメニュー