障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

26年2月17日更新

2026年「すべての人の社会」2月号

2026年「すべての人の社会」2月号

VOL.45-11 通巻NO.548

快適さの裏側で、誰が自由を失っているのか


JD理事 兼濱 克弥



 社会は、かつてないほど快適になりました。諸制度は整い、支援サービスは細分化され、困りごとは「仕組み」で処理されるようになっています。それでも、心を病む人は減るどころか増え続けています。この矛盾を、私たちはど こまで自分たちの問題として引き受けてきたでしょうか。

 沖縄で精神障害のある人たちとともに活動していると、制度の網の目からこぼれ落ちる現実に、日常的に出会います。入退院を繰り返し、地域に戻っても居場所がなく、行き場を失って再び病院へと戻っていく。その循環の中で、「あの病院は良くない」と誰もが知りながら、「でも、他に選択肢がない」と語られる現実があります。自由を制限すること、長期入院を続けることが、「安全」や「安定」という言葉で正当化されていく光景を、私たちは長く見過ごしてきました。

 一方で、沖縄には小さくても確かな実践があります。たとえば、精神障害のある人たち自身が運営に関わるフリースペースでは、「支援される側」であることを一旦脇に置き、誰もが同じ一人の生活者として関わります。調子の悪い日は、何もしなくてもいい。元気な日は、場を支える側に回る。そこには「回復の段階」や「目標設定」はありません。ただ、今日をどう生きるかを、ともに考える関係があります。

 また、地域の商店街や小学校、中学校と連携し、当事者が「演劇」を活用して表現する機会や仕事を担う場づくりも進んでいます。最初は「大丈夫なのか」と不安を口にしていた地域の人たちが、関わる中で少しずつ変わっていく姿を、私は何度も見てきました。 「支援しているつもりだったけれど、実は支えられていたのは自分だった」―そんな言葉が、実践の現場から自然に生まれてきます。

 これらの場に共通しているのは、「施し」の姿勢を取らないことです。守ってあげる、与えてあげる、管理してあげる。その関係ではなく、ともに失敗し、ともに迷いながら関係を編み直していく。その過程にこそ、人が社会の中で生き直す力が育まれていくと感じています。

 社会が快適になるほど、「はみ出す存在」は見えにくくなります。しかし、そのはみ出しは、社会の弱さや歪みを映し出す鏡でもあります。

 沖縄の現場から発せられる小さな実践は、完璧な答えではありません。けれど、人を管理する社会から、人とともに生きる社会へと向かうための、確かな問いを私たちに投げかけているのだと思います。

視点 能登半島地震から2年 人々の安心・安全を守るために
                  

JD常務理事 増田 一世



 2026年1月16日、日本障害フォーラム(JDF)と地域フォーラムin石川実行委員会との協力により、JDF地域フォーラムin石川が開催された。七尾市の和倉温泉「のと楽」が現地会場となり、オンラインでも配信された。会場には60人ほど集まり、オンライン含め約160人が参加した。

 国内でも有数の温泉地である和倉温泉だが、いまだに閉館している旅館・ホテルが多く、和倉温泉でマッサージ師として働いていた視覚障害のある人たちは、2年前の地震で仕事を失った。この窮状に石川県視覚障害者協会は、県に働きかけ、地域コミュニティー再建事業に参加し、和倉温泉で働いていたマッサージ師への移動支援を行い、被災地の公民館や集会所に避難している人たちへのマッサージを行うことを実現した。マッサージ師の人たちが仕事を得ることが被災者の支援にもなっている。

 また、能登町の聴覚障害のある人たちが働く「やなぎだハウス」は、地震に続き2024年9月の豪雨の被害を受け、2年近くかかって2025年12月に改修完工式を行なった。そして、JDF能登半島地震支援センターが、利用者の送迎、やなぎだハウスへの生活支援員の派遣、利用者の通院時の送迎などを行なっているという。いずれも被害に遭った人たちが一歩一歩それぞれの活動を取り戻しつつあることが伝わってきた。

 JDF支援センターのスタッフマネージャー 塩田千恵子さんは、この2年間の活動を報告した。支援内容はこの2年の蓄積の重みを感じさせる幅広い内容だった。具体的には、108人の障害のある人に個別支援を行い、家の片づけや修繕、公的手続きの支援、暮らしや福祉制度に関する相談、移動支援や付き添い(通院、買物、入浴、引越、諸手続き)などである。いずれも生活に密着した内容で、もともと交通の不便な地域だけに車での移動が必須だが、その担い手が圧倒的に不足しているのだ。また、個別支援に加えて事業所への支援も継続している。輪島市、能登町、穴水町、七尾市などの就労支援の事業所や放課後等デイサービスへの支援員の派遣が続いている。ある事業所では常勤3人で運営していたところ2人退職、また、10人の常勤職員が半分退職し、後から入職した人が福祉分野は未経験だったり、高齢だったりと、元通りとはいかない。

 JDF能登半島地震支援センターは、2025年9月末でその活動を閉じる予定であったが、圧倒的な人手不足や豪雨災害の影響などもあり、2026年3月末まで活動を継続することになった。間もなく3月を迎える。現地の皆さんからはまだまだ支援が必要であることが口々に訴えられ、JDF支援センターの果たしてきた役割の大きさを実感した。

 支援センターの役割をどう次につなげていくのかは、大きな難問だ。課題は山積している。仮設住宅に入居中の人たちは復興住宅に入居できるのか、障害のある人たちが暮らしやすい住まいが実現するのか。働く場への通所や通院等の移動支援は誰が担うのか。

 能登半島地震は日本の抱える様々な課題をあぶりだした。ことに人口減少に伴う人手不足はこの地で顕著だ。公共交通機関が少なく車での移動に依拠しなければならない。災害時には自助・共助が基本と言われることがあるが、地震から2年。この地域の実情からは、障害のある人も高齢の人も、自助・共助はもうできる限りやってきたことが伝わってくる。ここからは公的な責任での取り組みが必須である。どこで災害が起こっても官民挙げて支援が行われ、被災した人たちが再び自分らしく生きられることが、安心で安全な国なのではないか。武器をもって闘う準備に莫大な費用を投じるよりも、いつどこで起こるかわからない災害に対して万全の備えを行うことこそ、この国の為政者の責任ではないか。

2026年1月の活動記録



こども家庭庁からのお知らせ 旧優生保護法について国からの謝罪とお願い



薬害訴訟 HPVワクチン被害を考える

梅本 邦子(HPVワクチン薬害九州訴訟原告団代表)
清國 寿朗(HPVワクチン薬害訴訟を支える会・大分)




参加レポート ―JDF全国フォーラム―

障害者権利条約をめぐる世界の動向と国内課題 ~次世代への取り組み

長尾 康子(全国要約筆記問題研究会理事長)




連載 戦後80年・戦争と障害者 ⑸

「潰えた十の命」――知的障害者(下)

林 雅行(ドキュメンタリー映画監督・作家)




連載 優生保護法問題の全面解決に向けて 第6回

すべての被害者に謝罪と補償を届けるために

石原 健一郎(優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会 事務局次長
旧優生保護法裁判を支援する福岡の会 事務局次長)




続連載 赤國幼年記・青春記 プラスエピソード1

女子部屋の住人たち

古本 聡(翻訳業)




連載エッセイ 障害・文化・よもやま話

第54回 「黒船」の喩えにこもるもの

荒井 裕樹(二松学舎大学教授 / 障害者文化論研究者)




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