26年9月14日更新
2026年「すべての人の社会」9月号
VOL.46-6 通巻NO.555
■巻頭言 「人間らしく生きる」を支える
JD理事 米田 順哉
私は2003年にNPO法人を設立し、障がいがある方の地域生活支援を行なっています。理念とするビジョンは「障がい者本人とその家族の豊かな暮らしと幸せ」、ミッションは「本人が望み家族が安心する、彩り豊かな生活が永続する環境づくり」で、「ライフサイクル支援・地域生活支援・家族支援」がその3本柱です。
このミッションを真剣に実践しようとすると、さまざまな難しいケースに直面します。その一つが「恋愛・性・結婚」に関することです。障がいがある人の恋愛や性の問題の多くは、最初から無いことにするか、あっても見て見ぬふりをするかの2択で、正面から議論される機会はあまりないのではないかと思います。しかし人間が生きる当り前の営みを考えた時、これに背を向けることはできません。
法人を設立してまだ間もない頃、女性利用者が妊娠して流産したり、堕胎したりと、大変辛いケースが連続した時期がありました。私たちはこの時期に「恋愛・性・結婚」に対する支援方針について半年を超える議論を重ね、到達した見解が二つありました。
第一は、利用者が他者に対して恋愛感情を持つ、お付き合いして性行為に至る、またその結果として女性が妊娠し、出産する、これらの一連のプロセスは人間が等しく持つ権利であり、障がいがあることを理由に支援者が制限を加えることがあってはならない、ということ。第二は、その一方で、産む覚悟も育てる覚悟も無い無自覚の行為の結果、安易に流産や堕胎に及ぶことは命の尊厳性の観点から容認できない、ということです。
その上で、利用者どうしに恋愛関係があり性行為に及んでいる、もしくは及ぶ可能性が高いという情報を掴んだ場合、まず本人たちに、これからどんなことが起きるかを説明して気持ちを聴き、納得と共感を得たうえで、「女性は婦人科医師の指導を受け避妊対策をし、男性は避妊具の使用方法を学んで常備してもらい、本人たちを見守る」という支援方針を立てて実践しました。
この支援方針のもと、利用者どうしが2組結婚して私たちのグループホームで暮らしています。その内の一組は子どもを授かり、生まれた子どもは今年中学1年生になりました。これからどんな成長を見せてくれるか楽しみです。その間で夫婦は残念ながら離婚してしまいましたが(理由は想像にお任せします)、それも人生の彩りと考えます。因みに別れた男性の支援も継続しており、元夫婦どうしが普通に友達づきあいをしています。これも人生の彩りなのでしょう(笑)。
これからも様々なケースが出てくると思いますが、私たちは、障がいのある人が「人間らしく生きる」ことを支え続けていきたいと思います。
■視点 北欧の65歳
JD副代表 薗部 英夫
スウェーデンのストックホルム市立図書館側のバス停で下りて、市が管理する知的障害者住宅(「ノルツールスガータン12L」)を訪問したことがある。そこは55歳以上の知的障害のある人たちのための集合住宅で、居間、寝室、浴室・トイレ、キッチン付の「住居」が5つあり、総勢7人のスタッフによって、障害のある5人に個人のニーズに応じた必要なケア・サポートがされていた。
「なぜ55歳以上が対象なのですか?」と質問すると、「ダウン症はじめ知的障害のある人は、目安として55歳くらいから“高齢化”があるし、ケア・サポートもより必要になるのです」。「この集合住宅(6階までは高齢者住宅で7階が障害者住宅になっているアパート)は、どうして町の真ん中にあるのですか?」と聞くと、「公園もあり、散歩もできる。バスもタクシー使うのにも便利でしょ」。
だれもが歳をとる。不安と背中合わせの高齢期。身体機能、能力低下、「できなくなる」ことも多い。でも高齢期だからこそ備わる力も感じている。しかし、障害があることに加えての高齢化は、個人のニーズに応じたケア・サポートがより必要となることが多い。
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65歳を迎えた千葉市に暮らす重い障害のある天海正克(あまがいまさかつ)さん(現在77歳)は、それまで利用してきた障害福祉サービス(居宅介護:ホームヘルプ)の継続を申請したところ、市から介護保険移行を強制された。原則無償の障害福祉から介護保険に移行すると、新たに利用料が発生し「自己負担」となる。障害福祉に比べるとヘルパー派遣も制限されるなど必要なケア・サポートが受けられなくなる。そのため介護保険の申請を拒否したところ、市は障害福祉の継続を却下し、すべての福祉サービスを打ち切った。この千葉市の強引なやり方に納得できないと提訴したのが天海訴訟だ。
裁判は、介護保険優先原則(障害者総合支援法第7条)を理由に地裁は敗訴。しかし「千葉市は裁量権の行使を誤った」として高裁は勝訴。最高裁は、「介護保険の優先原則」を認めながらも千葉市の違法性は「審理不十分」として高裁に「差戻し」。現在、「千葉市のサービス全面打ち切り」の判断が「社会通念に照らし著しく妥当性を欠くもの(裁量権の逸脱・濫用)」に該当するかどうかについて東京高裁で審理されている(9月7日に口頭弁論)。
65歳の誕生日が喜びではなく悲しみとなってしまうような「65歳問題」は、北欧ではどうなっているのか。スウェーデン在住の友人・サリネンれい子さんにLSS法(スウェーデン障害者法)とその現状を聞いてみた。
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○北欧では福祉サービスはすべて無料だ。LSS法は昨年30周年を迎えた。LSS法自体に、「65歳」の年齢制限はない。対象となるのは、「対象の障害を有する」ということだ。
対象の障害は、「幼少期にわかっているもの」が重要なポイント。自閉症などで、成人になってからLSS法によるサービスを受ける場合はあるが、「高齢になって」ということについては、他に対応できる福祉サービスもあるため制限がかかる。
○「65歳になるとそれまで受けていた福祉サービスが受けられなくなるか?」というと、そういうことは無い。
ただし、日中活動の保障は、一般の人と同様に65歳で「退職」という形となり無くなる。しかし実際は、グループホームなどでの生活はそのまま継続するので、居住するグループホームが日中の活動を保障している。
また、高齢の人たちへの医療の問題もあり、「グループホーム」から「高齢者住宅・ホーム」に移ることもあるが、本人の意向に沿って行われている。
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以上がスウェーデンの現状だ。年齢が65歳になったからといって、障害故のケア・サポートが必要にならなくなるわけではない。当然のことだ。
国連では高齢者権利条約の起草に向けて、今年の夏には、適切なケア・サポートへのアクセスはじめ条約の具体的な構成案をベースにした実質的な条文交渉もはじまっている。
事件を風化させず、内なる優生思想を乗り越えるため、考え続ける
長尾 康子(全国要約筆記問題研究会理事長)
地域の家族依存と支援資源の現状把握こそが喫緊の課題
児玉 真美(日本ケアラー連盟理事)
『ロービジョン』が共通理解される日
芳賀 優子(JD協議員(共用品推進機構所属))
被害回復・補償の現状と新たな被害掘り起こしの課題
松本 多仁子(優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会〈優生連〉事務局長)
高齢者の声を国連へ届ける-高齢者人権条約づくりを支えるNGO-
鈴木 靜(愛媛大学法文学部教授)
どうして運転できないの? -欠格条項対象当事者の現実―
たにぐち まゆ(大阪精神障害者連絡会 事務局長)
第95回 「片方が聞こえにくい」とは何なのか
伊賀 星史(カラーユニバーサルデザイン機構)
第48回総合リハビリテーション研究大会 アクセシビリティの現状と課題、今後の方向性を考える~能登半島地震を踏まえて石川の地から全国へ
■個人賛助会員・・・・・・・1口4,000円(年間)
■団体賛助会員・・・・・・1口10,000円(年間)
★1部300円(送料別)からお求めいただけます。
▼お申し込みは下記JD事務局へメール、電話、FAXなどでご連絡ください。
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 日本障害者協議会
TEL:03-5287-2346 FAX:03-5287-2347
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※視覚障害のある方向けのテキストデータ版もございます。
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