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<分科会T>
障害者福祉三法改正と障害者総合福祉法
−どこまできたか、今日の論点は何か−


パネラー 遠藤 浩 (厚生省障害保健福祉部企画課長)
松尾 榮 (日本身体障害者団体連合会会長)
板山賢治 (日本障害者リハビリテーション協会副会長/
中央社会福祉審議会社会福祉構造改革分科会委員)
調 一興 (日本障害者協議会代表)
司会進行 佐藤久夫 (日本障害者協議会政策委員長/
日本社会事業大学教授)
指定発言 加藤房子 (日本精神障害者地域生活支援協議会)
加藤正仁 (日本知的障害者愛護協会副会長)
吉田 勧 (日本てんかん協会常務理事)

もくじ


1999年春の障害者福祉三法改正の課題は何か


[遠藤]
 障害者関係三審議会合同企画分科会では、措置制度の見直しを中心に論じています。利用者が事業者を選択できる方式を議論していますが、まだこの場で具体的に紹介することはできません。できるだけ早期に全体的な姿を示し、関係団体の意見を聞きます。公的責任や公費負担は後退しないことが大前提です。
[板山]
 必要なサービスが受けられないことのないように福祉の権利性の明記(具体的に法律にどう書くかは今後の課題)、わかりやすい利用者本位の制度、選べるだけのサービスの量的整備、前提としての所得保障の確立、専門職員の確保、公正で無理のない費用の負担、情報の保障、などが課題です。
[松尾]
 基礎構造改革の分科会に障害者団体はひとつも入っていません。これは一面では私たちの政策提言能力の問題でもあります。市町村の障害者計画は法的義務にしなければなりません。それぞれの市町村の障害者団体が一本になり、提言できる実力を持たねばなりません。地域間格差は地域の障害者団体にとって挑戦であり、足腰を鍛える機会です。事業者側からの契約の拒否が起こらないか、選択できるほど施設数はあるのか、などの問題を提起しています。
[調]
 基礎構造改革の背景に家族機能の変化があげられているのに、依然として障害者福祉は親がかりでいこうとしているようです。家族扶養から社会的扶養へという道は示されず、措置から利用へといわれ、権利擁護制度など、形だけが先行されようとしています。知的障害者の3分の1は入所施設で、精神障害者の34万人は病院で暮らしています。この状態をどう変えるかもみえません。選択できる資源がない。その整備計画が示されねばなりません。
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三法統合による障害者総合福祉法をどうみるか


[遠藤]
 縦割りの制度の谷間に落ちる人や重複障害をもつ人には現行制度は不便だという点は確かで、ニーズに着目したサービス体系なりを組み立てることは、それなりに合理性があります。ただサービスの体系や執行体制がまちまちで、総合法制化には条件整備が必要です。また当事者団体の合意も大切です。
[板山]
 総合障害者福祉法は、肝心の具体的な施策で障害種別のニーズにどう対応するのか明確にしてほしい。厚生省障害保健福祉部への統合により責任の所在が曖昧になったとの批判がある(この点で遠藤課長は、障害別担当から、一部事項別になったことにより窓口が従来とは変わったことを説明)。
[松尾]
 総合福祉法の問題については、当事者意識が希薄な机上論の印象があります。つまり多くの焦眉の課題に全力で当たらねばならないときに、なぜ三法統合なのかという感じです。また試案は在宅サービスに重点をおきすぎている、身体障害者手帳が6級まであるので「重度」と「その他」に分けるのは難しい、「障害者の努力義務」を削除せずむしろ障害者自身の努力を前面に出したい、と思います。
[調]
 私は、日本の障害者全体の福祉を高めていくためには障害者総合福祉法に統合するべきだと考えています。しかしそんなに急いでやれるとは思っていません。一歩一歩、各障害者施策が市町村に統合されていくことによって進むと思います。
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指定発言者のコメント


指定発言1/加藤房子
 精神障害者福祉の遅れを取り戻すのが先なのに、三法統合として遅れた位置から同時にスタートを求められると、焦ってしまいます。遅れを取り戻すには、手帳やホームヘルプサービスを、保健衛生部ではなく他の障害者のように市町村の福祉予算で行うことが必要です。
指定発言2/加藤正仁
 事業法改正に当たって、公的責任を数字的な裏付けを伴って示してほしいです。「施設から地域へ」という方向は賛成で、そのための地域サービスの確保を事業法改正を機に明示すべきです。
 障害福祉三法統合は時代の流れで、実態は先にいっており、すでに幼児の三障害相互乗り入れが始まり、学校では総合養護が進みつつあります。今後は卒業後の地域生活支援の統合です。いつの時代も、縦糸と横糸のバランスをはかりながら進むのが大切で、踏み出す前からそう心配することはないでしょう。
指定発言3/吉田 勧
 精神保健福祉法の改正では、発作だけで手帳が受けられるよう精神障害者の定義にてんかんを入れること、「社会復帰」という差別的言葉を削除すること、入院医療費公費負担、などを求めています。
 てんかん基本法を長年主張してきましたが、1991年頃から福祉の考え方の変化を背景に総合福祉法へと主張を変えました。つまり福祉は権利としての生活支援であり、能力障害あるいは社会的不利に対応するものなので、機能障害による区別がそもそもおかしいのです。
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三法改正・基礎構造改革についての質疑


質問/知的障害、精神障害分野でも市町村に実施責任をおろす場合の、町村へのサポートは?さらに措置費の負担が生まれるが町村財政への支援は?

[調]
 たとえば、何十もの授産施設・作業所を持つ市がある一方で、全国の4分の3の市町村には一つもありません。こうした格差の状態、選べる条件の不在を放置しては「選択」とは名ばかりです。そこで財政力の弱い町村への支援を含めて、サービス資源の具体的な整備計画と国の責任の明確化を計らねばなりません。
[板山]
 社会福祉基礎構造改革で求められていることの基本は、地域における総合的支援システムです。これを障害福祉分野で三法改正で具体的にどう書くか。これが全市町村につくられる頃、障害者福祉法制も総合化されます。

質問/人権・権利が、地域・コミュニテイに根づくためにはどうしたらよいのか?

[板山]
 コミュニティレベルで権利が根付くためにも、まず障害者計画の市町村の策定義務化を図るべきだと思います。市町村で障害者の生活支援を考えることなくして、権利は地域に根付きません。社会福祉事業法の改正で、市町村の地域福祉計画策定義務が入るので、障害者計画義務化の大きなバックアップになります。

質問/サービス・施設利用契約と成年後見制度の関係は?

[吉田]
 身上監護についても成年後見人の職務とするので、福祉関係の契約や、異議申し立ても担当しますが、問題は誰が後見人になるのかです。家族にすべてを任せるのでなく、専門家が出ていける機関が必要です。また成年後見制度は基本的には代行決定で、本人に代わって契約する権限です。この点地域福祉権利擁護制度と違います。
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障害の種類を超えた連帯


質問/ この瞬間にも約34万人の仲間が鍵と鉄格子のなかにいることをわかっていただきたい。保護者規定を廃止し、インフォームド・コンセントを入れてほしいです。ぜひ福祉法は医療と別立てにしてください。また精神障害者を雇用率制度に入れてほしいと思いますが、そういうときぜひ日身連は反対しないでください。

[松尾]
 かつて精神障害者への理解が足りず、大変ご迷惑をかけたことは聞いておりますが、私はおとなしい会長ですのでそういうご心配はありません。佐賀県の場合、三障害一緒になって進めていますし、110番事業も一緒にやっています。精神障害の当事者もどんどん発言し、自己主張をすべきと思います。
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障害者総合福祉法についての議論


質問/児童福祉法、老人福祉法との関係は?

[司会]
 それらとの統合はまた次の段階の課題とし、まず数年を目標に三法統合を考えました。
[松尾]
 私の結論としては、将来的には一本化が望まれるが、現時点では手帳の問題なども含めて、いろいろ審議したほうがいい。
 新障害者の10年・推進会議などで、各団体が集まり、日本全国の障害者の意見をまとめてやるなら、私はいいと思います。
[調]
 総合福祉法は、1991年にJDの方針となりました。統合すると障害の特性が殺されるという不安もありました。しかし身体障害者福祉法は現に、いろいろな障害を対象としており、エイズも入りました。共通する部分とそれぞれ特徴あるサービスが同一法にすでにあります。総合福祉法推進すべきです。障害施設40種類、授産施設だけでも十12種類です。障害種別に配慮はしつつ、統合し、施設の再編や障害等級の見直しなどを行うべきです。
[司会]
 三法統合は中長期課題ともいわれますが、まもなく三法の実施責任が市町村にそろうなど、条件は整いつつあると思います。障害者団体は、中長期課題を政策提言する、松尾さんのいう「信頼される団体」にならねばなりません。総合福祉法については、あまり反応のなかった時期を経て、今ようやくみんなで議論する時期に入ってきたという実感を得ました。
 基礎構造改革は目前に迫りました。障害三法にサービスを受ける権利が明記されるか、選べるだけの資源を整備する公的責任が明確になるか、ここ数ヵ月の課題を明確にする分科会でした。[編集/佐藤久夫]
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