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<分科会U>
新時代を生きる障害のある人の所得保障制度への提起


進行 池末美穂子 (JD政策委員/全国精神障害者家族会連合会事務局長補佐)
問題提起 平野方紹 (埼玉県自治研修センター)
指定発言 藤井克徳 (JD常務理事/共同作業所全国連絡会常務理事)
助言者 高藤 昭 (法政大学社会学部教授)
記録者 柳沢 充 (障害者と家族の生活と権利を守る都民連絡会)

もくじ



生活保護に頼らず生活できる障害年金を


 最初に、助言者の高藤昭氏から、十月九日に発表された年金審議会の意見書に関して、「少しは前進があるかと思ったが、『無年金障害者の問題については年金給付を行うことは困難である』とし『障害者プランを踏まえ、適切な検討が必要である』との意見にかろうじて期待をつなげる程度」との話があった。
 また、現在の障害基礎年金は形式的な老齢年金と同額となっていることに関して「障害者の多くは資産を持っていない。また、基本的なニーズが高齢者とは違う」等の問題点を指摘した。
 さらに、生活保護と障害基礎年金が金額的に大きな差があり、障害年金だけでは自立した生活ができないことから生活保護を受給している障害者が多いことも述べられた。
 高藤氏は、諸外国の障害者給付を紹介しながら、「年金制度とは切り離した障害者独自の制度が必要ではないか」との提起がなされた。障害者運動のあり方にも触れ「年金審議会の意見書は不満だが、これは運動が弱かったからではないか。もっと的を絞った運動が必要。運動の工夫も考えるべき」と述べた。


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障害者ニーズを把握する


 会場からは「今までは、あれもこれもという運動ばかりでまずかった。障害のない人と同じことをしたいわけで、税金も払いたい。これからの運動は、まけてくれではなく、正々堂々と生きていけるような運動にしたい」「障害等級を見直してほしいという運動をしてきた。そして、障害基礎年金額を老齢厚生年金に近づけること、それ以上であってはならないとも主張してきた。現在、障害年金と生活保護や手当など合わせて二十万円近い額で暮らしている人もいる。これは高すぎるのではないか。また、働いている人と働いていない人との落差はどうなっているのか。こうした視点も大事」「拠出制、無拠出制をどう考えるのか」「三級の人には年金がでない」等さまざまな意見が出された。
 高藤氏は「年金の税法式は全額国の負担になり、年度の予算によって変わる危険がある。また、生活保護に頼らないで生活できる年金制度を作らせなければいけない。障害者の現実のニーズを把握した上での年金制度が必要。障害者側から提起し、生活実態を訴えていくことが課題」と述られた。


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障害者の所得保障の問題点と課題


 平野方紹氏から、障害者の生活状況と所得保障の現状や改善点などの問題提起がなされた。
 平野氏は「障害年金と生活保護には金額の違いもあるが、制度の成り立ちが違っている。生活保護は貧困かどうかであり、障害年金は貧しいからではなく障害があり、それ故特別な需要があるかどうかということ。現状では障害基礎年金では生活保護でいう最低生活すら保障できていない。また、障害年金の金額が老齢年金を基準にしている妥当性がない。現在の障害認定に関しては、基本的には労働能力を機能・形態レベルで評価しており、稼得能力の評価とはなっていない」等の問題を指摘された。
 今後の課題として、「年金額を上げることと福祉制度、そのどちらも充実させていかなければならない」と述べ、「今までの福祉の経済学は、(1)「富裕アプローチ(福祉のものさしを金銭的豊かさではかる)」から、(2)「効用アプローチ(どれだけニーズが満たされているか)」へと変化してきたが、どちらも「出す側」の理論だった。今後は、(3)「機能的アプローチ(どれだけ自分のもっている能力を発揮できたか、どれだけ自分らしい生き方ができているか)」という理論が必要と話された。


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障害年金の充実を


 会場からは「高齢障害者の就労問題も課題」「年金制度自体働けなくなったことが前提としての制度。障害者は、働きながらの年金も重要」「現在の生活保護を権利として制度を充実させることで、年金との併給も考えてもいいのではないか」「今後、生活保護自体はどういう方向に向かっていくのか」「障害者の所得保障は障害年金が基本。障害年金をまずは充実させていくことが課題であり、さらに前進させるべき」「障害者の多くは就労できないことからも所得保障としての年金が必要。年金は自分で選択して、ほしい物が買えるが、生活保護ではそれができない」「生活保護は一時的な救貧制度。障害者が生活保護を受けると自立しにくくなる。生活保護とは切り離した形で生活できる年金を確立させていくことが必要」「実際に生活保護を受けているが、年金で生活を保障されたほうがいい」「働けない障害者に対して、企業と国がバックアップして、平均賃金を出せるだけの保障を生活保護とは違う形でつくらせる運動が必要」等、活発な意見交換が行われた。
 平野氏は「現在の年金額が低いから生活保護を受けている障害者が多い。今後、公的な責任とは何かという点から生活保護も本格的な議論をされると思う。内容も、最低保障と自立自助を切り離して考えなければならないのではないか」と話された。


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JDの今後の運動


 最後に藤井氏から「JDは、さまざまな課題の中でも、所得保障を大きな課題と捉えている。それを、稼得能力・労働とどう結びつけていくのかが問題。生活保護も変えていかなければならない。
 具体的には、障害基礎年金1級=生活保護の基本生計費(生活扶助1類プラス2類)に障害者加算を増額して加えた額を目安としている。これを起爆剤として家族制度、労働、経済の視点から障害者の所得保障が議論されていくだろう。
 JDには現在6つの専門委員会があるが、企画委員会の中に所得保障制度に関する小委員会を特別委員会として設置させていく。障害の種別を超え、地域を越えて、『障害者に関する総合計画提言』の主要なテーマとしながら運動を進めていく」と、述べられた。


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