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<分科会W>
社会的自立の方途として「働くこと」をどう考え、実現するか



進行 小野 隆 (JD総務副委員長/日本障害者雇用促進協会・障害者職業総合センター指導役)
記録者 杉本豊和 (共同作業所全国連絡会)

もくじ



はじめに


 この分科会では、上記のテーマでJDの総合計画提言プロジェクトの「職業リハビリテーション(以下、職リハ)雇用制度に関する提言」を参照しながら、広く働くことについて議論を深めることとした。参加者は障害者本人、職リハ専門職と施設職員が主であった。
 討議を進めるにあたり、進行の小野氏より四つの柱が提起された。
 1点目は「職業リハビリテーションの範囲の確認」である。職リハは職リハ専門職のみが行うものと捉えられがちである。しかし、ILOの「障害者の職業リハビリテーションの基本原則」や日本の「障害者の雇用の促進に関する法律」をみても、職業生活全般にわたるサービスを指しており、職リハの範囲についての確認を行うこととした。
 2点目は、職リハの対象を「障害者」として捉えるのではなく、「職業上の支援を必要とする人々」と考えることについてである。対象を「障害者」とした場合、福祉施策としての手帳制度との連動になり、必ずしも職リハを必要とする人々と合致しない場合がある。ここでは「障害」の範囲と認定の方法について深めることとした。
 3点目は周辺領域との関係である。継続的な支援を必要とする人々は、生活の基盤となる地域や所得保障などの分野との関連なしに進めることはできない。
 4点目は法制度の整備である。この中には専門職の職務内容、資格条件を始め、雇用率および納付金制度、授産施設等での労働の考え方や支援策等も含むこととした。


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議論の内容


 職リハの範囲では、「職業」というと一般就労がイメージされるが、広く「生産を行う」と捉え、すべてを職リハの対象とすべきであり、現行の施設制度では障害者は「労働者」と捉えられておらず、施設での労働も含めて「就労」と考えていくべきとの意見が出された。また施設での労働に対する賃金が低すぎるので、保護雇用制度や賃金補填が必要との意見もあった。これらに対して施設での労働は家内制手工業的なものが多く、いわゆる「就労」との差がありすぎるのではないかとの意見も出された。これらは全体的な所得保障との関連で議論する必要があるという課題が提起された。
 職リハの対象としては、手帳制度に該当しない人でも職業的支援が必要なケースがあることが問題点として出され、これに対しては(1)障害者福祉法の統一によって解決できる部分、(2)知的障害者の重度判定の方法を拡大してできる部分などが提起された。
 法制度の整備では、授産施設や小規模作業所で多数の障害者が何らかの形で働いているが、「働く者の権利」が保障されていない。例えば施設で働きたくても施設がないなどの厳しい現実があり、授産施設などの機能を明確にさせながら継続した雇用の場として労働法規を適用させていくべきではないかとの意見が出された。また一般就労との差については、授産施設の専門性が問われており、現在の条件では厳しく、これを発展させる施設が必要であると関係者からの主張があった。


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まとめ


 全体としては、短い時間でありながら、この分野での今後の課題が整理されたと感じる。それは、(1)手帳制度の対象をそのまま職リハの対象とすることは無理があり、職業上の支援をする人々を対象とする認定制度が求められること、(2)職リハの範囲は「働くこと」全般への支援・援助であるべきこと、(3)施設における「労働」についての考え方を整理するべきであること、(4)それと関連して、賃金補填、所得保障のあり方を真剣に検討する時期にきていること、(5)就労の入り口(雇用率)の問題だけでなく、就労後の職業生活も含めた広範囲で継続的なものであるべきこと、(6)これまで述べてきた職リハ本来の姿を支える専門職の養成が必要なこと、の6点である。
 この分科会での議論と「政策提言」の内容が生かされ、日本の雇用制度、職リハが飛躍的に発展することを期待して分科会を終了した。


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