進行 | 太田修平 | (JD政策副委員長/障害者の生活保障を要求する連絡会議事務局長) |
原 滋 | (障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会前副会長) | |
丹羽 薫 | (こらーるたいとう) | |
根来正博 | (全日本手をつなぐ育成会政策委員) | |
平岡久仁子 | (日本ALS協会幹事) | |
橋本 操 | (日本ALS協会幹事) | |
記録者 | 市川 徹 | (障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会) |
本分科会では、上記のテーマで、地域社会における介護制度についての討論が行われた。当日は、三十名近くの参加者が集まった。
パネラーからの発言では、まず丹羽薫氏から、精神障害者の介護問題についての問題提起があった。
特に今後必要な点として、(1)精神障害者の場合、体が大変つらいので、具合が悪く動けなくなってしまった時には、すぐに介護をしてもらえるようにすること、(2)「話を聞いてくれること」も介護のひとつとして認め、そのための人を配置すること、(3)長期入院していた患者が、退院後に地域で受け入れられるよう、体制を整えること、(4)親・家族の負担を軽減するためにも、緊急に何らかのサービスを設けることなどが挙げられた。
次に、原滋氏から、介護保険制度の問題点として、(1)措置制度が廃止されると、行政が責任をもって福祉サービスを提供するという従来の仕組みが根本的に変質させられ、公的責任が大きく後退する、(2)利用契約方式になると、国・自治体の公的責任が事業者・利用者相互の責任に転嫁される、(3)営利を目的とした民間企業が参入すると、利用者の選択どころか、障害者など低所得者や採算の合わない重度・重複障害者は除外される(逆選択・逆選別)という点が挙げられた。
続いて、全日本手をつなぐ育成会の根来正博氏から発言があった。
根来氏は、知的障害者のホームヘルプサービスについて、各市町村が地域の住民へのサービスとして展開することが大切であるとともに、「知的障害者のニーズはない」という各市町村の意識の変革をはかることが必要であると強調した。
また、知的障害者のケアマネージメントについても、本人に合わせた基準(老齢者との違いを明確にする)づくりをするなど、さらに充実すべきであると述べた。
日本ALS協会の幹事である平岡久仁子氏からは、ALS(筋萎縮性側索硬化症患者―進行すると手足が動かなくなり、話すこと、食べること、呼吸することができなくなって死に至る神経難病であるが、最近は人工呼吸器を装着して生きる道が開かれてきた)の介護問題について指摘があった。
特に問題点として、(1)24時間付きっきりの介護が必要になること、(2)介護人を探すことが難しいこと(コミュニケーションをはかることが難しい、喀痰吸引があるためなど)、(3)ホームヘルパーが喀痰吸引をできないこと(医療行為にあたるため)などが挙げられた。
それに対する改善策として、(1)さまざまなネットワークを利用して、介護人を確保すること、(2)喀痰吸引行為の制限を解除させること(個人契約に基づくものとして法は介入しない、介護・医療の現場実習体験者は制限しない。医療法の検討)、(3)介護費用の負担を軽減すること(時間単価のアップ、グループホーム利用で複数者の介護、やむなく家族介護の場合は手当支給)などが今後の課題として挙げられた。
ALS患者の橋本操氏からは、コミュニケーションの取り方(口の動きとまばたきで判断)の説明があった。また、個人契約している介護人については、組織に所属していないために(所属すると喀痰吸引ができない)、社会的地位が不安定であることが訴えられた。
最後にまとめとして、進行役の太田氏は、「『どんなに障害が重くても、地域社会で暮らしたい』という思いがあっても、現状ではまだまだ厳しい。介護保険法の導入後は、その時点での社会資源に対応した生活を迫られるのではないかという不安がある。やはり、当事者がきちんと『自分はこういう生活をしたいんだ』と主張・提言することが大切である。
JDとしては、今後もそういった活動をしていきたい」と結んだ。