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<分科会Y>
アクセスは、基本



進行 成瀬正次 (JD国際委員長/全国脊髄損傷者連合会副会長)
パネラー 星川安之 (E&Cプロジェクト)
今西正義 (株式会社トラベル・ネット統括部長)
進行/
記録者
八藤後猛 (JD広報委員/日本大学理工学部建築学科)

もくじ


はじめに


 本分科会は、アクセスを「移動・交通・まちづくり」だけでなく、工業製品を含めて広範にとらえ、その現状と問題点について議論した。参加者は、障害者運動にかかわる当事者、メーカー、セラピストなどの専門家等、ニーズも問題点の考え方も異なるであろう幅広い人々であった。


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誰でも使える「共用品」


 星川氏は、各メーカーが参加するE&Cプロジェクトにおいて、誰もが利用できるための商品開発などの研究事業をしている。「誰もが使える共用品」をめざし、メーカー間で私的なプロジェクトができている。そして、日本に入ってきた概念「ユニバーサルデザイン」の思想を実現すべく、各メーカーが勉強し、その実現のために何をすべきか模索したという。
 さまざまなメーカーで「不便さ調査」をユーザーに対して行ったところ、ある家庭用洗剤メーカーには、視覚障害者から年に15件ほどの苦情があったことがわかり、現在では19社がシャンプーにギザギザの目印を共通してつけるまでになっている。これらは、弁当のソースとしょうゆなど、さまざまな商品に点字がはいることになる。ただし、現実には点字が読める者がどれくらいいるかという指摘もあるが、こういうものは、1つの運動として考えているということである。
 玩具メーカーでは、誰もが共に遊べる玩具に「盲導犬マーク」を設定した。このマークは現在では玩具協会公認マークとなる。
 現在では、世界会議でのガイドラインの作成にあたり、こうした思想は日本から世界へ広まっている。
 たとえば、ディズニーランドは、利用できないものがあるからといって、障害者を半分の入場料にしているということはない。これを基本的な考え方として、さまざまな商品へのアクセスを最大限確保するよう努めることが企業としての役割と思っているということである。


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誰もが利用できる社会環境をめざして


 今西氏は、運動の発端を脊髄損傷者が宿泊できるところがなかった状況の頃、それをきっかけに運動を始めた。たとえば、東京都大田福祉工場では、年に1回「街に出ようキャンペーン」があり、いろいろな駅で、エレベーター、エスカレーターなどの設備にみんなで乗り、みんなで調べるというイベントがある。DPI(障害者インターナショナル)でも、毎年一日、全員で地下鉄に乗るという運動を通して、交通機関にその必要性を訴える運動を続けている。
 こうした運動を通して、解決方法にはさまざまな方法があることを知ったという。たとえば、関西では車いす使用者が電車に乗るときは、ホームと電車の間に橋のように板を敷く。また、エスカレーターも特段の設備がなくても斜めのまま乗降する。どのようにすべきかという設計思想は、地域、人によってさまざまであり、ニーズも異なることから「共用できるもの」「バリアフリー空間」など一律にはいえないであろう。また、多様なニーズが存在することも忘れてはならないということである。


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まとめ


 運輸省のガイドラインでは、多くの車いす使用者にとっては、券売機の高さが合わない。こうした環境や機器について、発注する側にも、販売する側にも当事者が利用するという視点がまったくないことが指摘された。開発の段階での当事者参加がなされていないのはなぜかという疑問がいつも残る。
 そして、券売機の前にいると、駅員が飛んでくるという現状は、このような使えない「共用品」の普及と、あるべき姿としては、むしろよくない方向なのではないだろうか。心のバリアフリーは、まず物的なものを最低限確保してから論ぜられるものであると考えた。


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