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<分科会Z>
完全な社会参加のための情報保障を考える著作権をめぐる提言


コーディネーター 薗部英夫 (JD情報通信ネットワークプロジェクトプロデューサー/
全国障害者問題研究会事務局長)
堀込真理子 (JD情報通信ネットワークプロジェクト/(福)東京コロニー)
パネラー 川瀬 真 (文化庁著作権課)
太田晴康 (全国要約筆記問題研究会代議員/
東京都登録要約筆記奉仕員/東京都中途失聴・難聴者協会会員)
高村明良 (筑波大学附属盲学校教諭)
助言者 清原慶子 (ルーテル学院大学教授/元JD情報保障に関する研究会委員長)
記録者 田中克典 (JD情報通信ネットワークプロジェクト/埼玉県立川口工業高校)

もくじ


はじめに


 分科会Zでは、障害者の情報保障をめぐって取り上げられる「参政権」と「著作権」の問題、特に現行の「著作権」のためにその利用を制限されている障害者の権利や、多くの情報が活用できるための具体的な方策などについての提言を含めて、特別報告と三人のパネラーによるパネルディスカッションが行われた。


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特別報告


 特別報告を行った清原慶子氏は「障害の有無や種別によらず適切な情報を受けることが重要で、情報保障は社会参加の基本となる人権保障のひとつである。情報保障をめぐって残った課題として、著作権と参政権の問題がある」と述べられた。
 さらに、障害者の参政権をめぐる情報保障のあり方について、「基本的人権の観点から参政権を具体的に保障する必要がある。そのためには、投票所のアクセシビリティと、投票方法のアクセシビリティを先進の諸外国にならって整えていく必要がある。
 情報保障の方向性としては、選挙情報の電子化と電子投票を検討していきたい。」と述べられた。


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パネルディスカッション


 その後のパネルディスカッションでは、薗部英夫氏、堀込真理子氏のコーディネートのもと、情報保障をめぐる著作権の問題を中心に進められた。
 最初のパネラーの川瀬真氏は、「障害者の情報保障と著作権の問題について、文化庁としても承知している。この問題の調整を図る方法として、法律を改正して著作権の制限を拡大するという考えもあるが、著作権の権利者に利用者が許諾をもらう円滑なシステムの整備が必要であると考えている。文化庁としても権利者団体と障害者団体の間の橋渡しをしてきた実績を活かして、今後も努力したい。」と述べられた。
 次のパネラーの太田晴康氏は「聴覚障害者向けにテレビ放送の字幕をつける活動をしている中で、著作権法がバリアになっていると感じた経験を何度もしてきた。この問題を解決するポイントは、著作権を無視するしないではなく、医学的、生理学的に音声が入手できない状態におけるあり方を規定すればいいと考えている。」と指摘された。
 最後のパネラーの高村明良氏は「視覚障害者の利用者の立場から考えると、情報の電子化によって利用者の好みに応じてインタフェイスを取り替えられる可能性がある。現在の著作権は著作者の権利を守る立場から作られているが、これからは利用者側の権利を明確にする必要があると思う。」と述べられた。
 その後のフロアの参加者との意見交換の中では,障害者の情報保障と著作権法に関わる問題について、具体的な事例がいくつか挙げられた。パネラーの川瀬氏から「現在、一般的に著作者が非常に慎重になっている過渡期で、これから日本では著作物の利用について著作者と利用者との間で『契約』を成立させるシステムが必要であると思う」と述べられた。


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まとめ


 最後にそれぞれのパネラーが「著作権法がひとつの切り口ではあるが、もっと高いところから全体を見てこれからの法律のあり方を検討していく必要がある。」(高村氏)「社会福祉サービスと現行の著作権法は切り離すこと、重要性と緊急性を区別して議論すること、現場の視点、実践の視点を重視することがこの問題において必要なことだと考えている。」(太田氏)「著作権法も障害者の情報保障も個人の財産、人格を保護する権利で慎重に対応すべき問題と考える。素材が提供され、加工され,活用される良いシステムを考えていくことが大事だと考えているので、障害者団体側の協力をお願いしたい。」(川瀬氏)とまとめられた。


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