
25年6月16日更新
○JDは6月13日に生涯年金の改正に関する意見書を厚労省に提出しました。
2025年6月13日
厚生労働大臣 福岡 資麿 様
NPO法人日本障害者協議会(JD)
代表 藤井 克徳
障害年金改正に関する意見書
5月16日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が、第217回通常国会に提出されました。これは、障害年金のあり方にも大きな影響を与えるものです。今後の公的年金制度改正の議論に際して、政府・与党及び国会に、以下を求めます。
1.障害年金改正に関する専門部会の設置について
2024年12月25日、社会保障審議会年金部会は、2年間(24回)に渡る議論を踏まえ、「社会保障審議会年金部会における議論の整理」を公表しました。しかし、この「議論の整理」では、障害年金に関する「検討課題」は示されたものの、障害年金の抜本改正はまたも見送られました。5年ごとの財政検証時での審議のみでは、障害年金の抜本改正は望むべくもないことを露呈しています。また、2022年9月に国連障害者権利委員会から示された総括所見でも、「障害者団体と協議の上で障害年金の額に関する規定の見直しを行うこと」が勧告されています。
これらを踏まえ、今後の障害年金改正に向けては、障害者団体が参画する専門部会を設置し、迅速な議論を進めることを求めます。
2.障害年金受給における障害認定システムの抜本的改正について
共同通信の報道(4/28・29、5/2)では、障害年金に関する実務を担う日本年金機構障害年金センターが、障害年金受給における障害認定に恣意的に関与し、判定を委託する医師に示唆を与えていたことが報じられています。この報道に関して、厚生労働大臣は調査を行うことを国会において答弁しています。その後、同省は不支給と見込まれた事案について、より丁寧な審査を行い、再判定していたことを事実上認めました。障害者の生活を支える所得保障の要である障害年金に、このような個別性を無視した画一的な権力の介入は容認できるはずもありません。障害年金受給における障害認定は、保健・医療・福祉関係者による「合議制」による審査とし、専門職による「訪問調査」から得られた情報を勘案することを求めます。
また、第217回通常国会に提出された年金制度改革法案を可決した衆議院厚生労働委員会において、①障害年金の判定に際し、恣意的な判定がされないように透明性を確保するための必要な措置を講ずること、②医学モデルのみならず社会モデルも踏まえて、機能障害だけでなく日常生活の状況等を把握した上で障害等級の認定を行うことなどを内容とする附帯決議が採択されました。この決議に基づく、早急な改善を求めます。
3.今後検討すべき残された課題
障害年金制度には多くの課題が山積していますが、当面以下の2点について早急に取り組むことを求めます。
① 所得保障と住宅保障の両立について
家族や施設に依存しない生活が実現可能となる障害年金の増額を実施してください。なお、障害者権利条約第28条では、「適切なサービス保障」と同時に「適切な住宅の保障」を求めています。障害者が地域で自立した生活を送るためには、障害年金などによる所得保障を基盤に、公営住宅などの整備とともに住宅費保障という金銭給付を求めます。
② 特別障害給付金法改正について
無年金障害者を福祉的措置によって救済する特別障害給付金法が、超党派の議員連盟によって制定され20年が経過します。しかし、「今後の課題」である附則の実施はいまだ放置され、多くの無年金障害者が対象から外されたままです。とりわけ、国籍要件によって国民年金に加入すらできなかった在日外国人の救済は急務です。
この問題に関しては、自由権規約委員会第4回総括所見パラグラフ30(2008年10月)、同第7回総括所見パラグラフ43(2022年11月)、そして、人種差別撤廃委員会第7回・第8回・第9回総括所見パラグラフ14(2014年9月)にも、「国籍要件によって国民年金法から排除されている在日外国人に対して障害基礎年金の適用を認めること、また、福祉的措置により救済すること」が厳しく勧告されています。
これらを早急に実施することを求めます。
以上
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