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25年7月2日更新

障害年金改正に関する意見書

〇JDでは6月27日の最高裁判決を受け、声明を発表いたしました

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2025年7月1日

 

声明


生活保護引き下げ最高裁勝訴判決にあたって

 

NPO法人日本障害者協議会(JD)
代表 藤井 克徳


 2013年~15年にかけて、国は物価下落を理由に生活扶助の基準を最大10%引き下げた。「生活保護バッシング」の広がる中で政権復帰を目指した自民党は「給付水準の原則1割カット」を選挙公約に掲げ、その公約を国(厚労省)が忖度し、実現したのである。この暴挙に対し、障害のある人を含め全国で1000人余が裁判に立ち上がった。障害のある人にとっても生活保護制度は、自立した生活を可能にする大事な制度であり、多くの障害のある人が原告として闘ってきた。
 6月27日、最高裁判所は引き下げの背景や過程などを精査し「生活保護費の大幅な引き下げは違法であり、厚労省の判断には裁量権の逸脱や乱用がある」と断じた。原告、弁護団、支援者のあきらめない闘いがこの判決を引き出したことは大きな成果である。原告らは「司法は生きていた」「再び同じ過ちを繰り返さないでほしい」と喜びの声を上げた。しかし、本当の解決には道半ばである。

 昨年7月3日の優生保護法をめぐっての最高裁大法廷での判決が想起される。判決後、総理大臣はじめ各大臣の謝罪、基本合意書の締結、国会での謝罪決議、補償法の制定などが進んだ。生活保護基準切り下げも長期にわたる国による誤った政策によるものであり、その結果生活の余裕を奪い、筆舌に尽くしがたい我慢を強いてきたことを自覚すべきであろう。また、訴訟期間中に、1000人を超える原告のうち232人余りが無念のうちに亡くなられていることも忘れてはならない。
 国は原告をはじめ約200万人ともいわれる生活保護受給者に謝罪すべきである。同時に、この10年余り生活苦の中にいた人たちが、本来受け取るべきであった生活保護費をさかのぼって支払うための準備を即刻開始すべきである。 
 「いのちのとりで裁判」といわれてきた本裁判だが、改めて憲法25条の「健康で文化的な生活」を実現するための生活保護制度のあり方をめぐって、生活保護を利用する人たちや市民の声を政策に活かすための仕組みづくりを考える好機であろう。加えて、なぜこのような結果を招いてしまったのかを徹底検証し、再発防止策を構築し、社会保障基本法や生活保障支援法(生活保護法に代わる新たな理念の下での実体法)などの法体系の整備を図っていかなければならない。
 これらの具体化にあたっては、「私たち抜きに私たちのことを決めないで」の観点を忘れないことであり、わけても生活保護受給者や、受給者の中の障害のある人の声に耳を傾けるべきである。さらには、生活保護バッシングが社会に広がらないように正しい情報を社会に伝えていくことも国の責務であることを強調したい。


 

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