障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

26年6月16日更新

2026年「すべての人の社会」6月号

2026年「すべての人の社会」6月号

VOL.46-3 通巻NO.552

巻頭言 能登半島地震から2年、支えあい、つながる私たち


JD理事 山本 伸一



 能登半島地震から2年が経過しました。あの時、私たちは改めて自然災害の脅威と、それに直面する人々の脆弱さ、そして支え合う力の重要性を突きつけられました。特に障害のある方々にとって、災害は単なる生活の困難にとどまらず、人権そのものが揺らぐ深刻な事態となり得ます。避難の遅れ、情報の不足、支援の偏在など。このような課題は、発災直後から私たちの目の前に立ちはだかりました。これは、現実として受け止めなければなりません。

 私は、日本災害リハビリテーション支援協会(JRAT(ジェイラット):Japan Disaster Rehabilitation Assistance Team)の事務局長として、被災地でのリハビリテーション支援の調整に携わりました。

 現地では、多職種が連携しながら、生活機能の維持・回復に向けた支援が懸命に行われていたことは、今でも忘れることはできません。しかし同時に、制度の隙間や支援の届きにくさも痛感したところです。特に、障害のある方々や高齢者が「支援を受ける側」として一括りにされるのではなく、それぞれの尊厳と意思が尊重される支援の在り方が求められていることを強く認識しました。

 災害時においても、障害者の人権は決して後回しにされてはなりません。それは平時と同様に守られるべきものであり、むしろ非常時だからこそ、より意識的に配慮される必要があります。情報保障、合理的配慮、意思決定支援――これらは単なる理念ではなく、具体的な行動として実装されなければなりません。

 一方で、現地では地域の中で自然に生まれる「支え合い」がありました。専門職だけでなく、住民同士が互いを気遣い、声をかけ合い、小さな助け合いを積み重ねていく姿は、「すべての人の社会」の原点そのものであると感じたところです。制度や仕組みだけでは支えきれない部分を、人と人とのつながりが補い合っていたと感じたのは私だけでしょうか。

 この2年を振り返り、私たちに求められているのは、過去の経験を教訓として未来に活かすこと。災害対応の強化だけでなく、平時からの地域づくり、インクルーシブな社会の実現に向けた取り組みが不可欠です。障害の有無にかかわらず、誰もが安心して暮らし、いざという時にも取り残されない社会――それこそが私たちの目指すべき方向です。私たちは、引き続き多職種連携を軸に災害時のリハビリテーション支援体制の充実に努めてまいります。

 能登半島地震の記憶を風化させることなく、そこから得た学びを未来へとつなぎましょう。その歩みの先に、「すべての人の社会」が実現されることを信じています。

連携・連帯を広げて人権と平和を守り抜く運動を
―第16回総会議案書『はじめに』より                   



 戦後80年、しかし「新しい戦前」という声も聞こえてくる。ロシアによるウクライナ侵攻は終息のめどがつかず、イスラエルのガザ侵攻、そして、イスラエルとアメリカによるイラン攻撃……戦禍の中で避難することが困難で、情報が得られにくい障害のある人の命や暮らしは常に危険にさらされている。そして、戦争が人間の心身に与える影響は世代を超えて引き継がれる。戦争が終結しても戦争被害は続く。第二次世界大戦の痛烈な反省から生まれた国際連合であるが、大国の思惑によりその機能が削がれ、とくに拠出金の急減は平和や人権に関する役割と活動に深刻な影響を及ぼしている。

 一方、障害者権利条約制定から20年。この20年に日本の障害のある人の暮らしの実態はどの程度向上したのだろうか、家族への依存を前提とする政策基調から脱却できたのだろうか。残念ながら、いまだ「親亡き後」を心配する声は止むことなく、あきらめと我慢の中に押し込められた人たちが少なくない。この実態から目をそらすことなく、家族依存からの脱却を目指していかねばならない。

1.日本国憲法公布80年 自分らしく生きる権利を
 2025年は広島・長崎への原爆投下から80年、2025年11月に開催した「憲法と障害者2025」では、原爆被害の実際と被害者らが中心となった運動の歩みを学んだ。改めて日本国憲法の意義を確認したが、現政権は憲法改正を最重要課題の一つと位置づけ、不戦を誓った憲法9条の改正や緊急事態条項の新設が現実味を帯びている。「戦争できる国」への傾斜に拍車がかかっていると言えよう。日本国憲法は、法の下の平等をもとにして、自分らしく生きる権利を保障している。しかし、戦争は「個人の尊重」よりも国家を優先する。私たちは戦争の反省から生まれたこの憲法を守り、平和な社会を求めていく。

2.障害者権利条約、総括所見(勧告)を活かした国内人権機関を
 2026年3月に開催したJD特別セミナーのテーマは、「国内人権機関」だった。長年実現に向けて研究や視察を重ねている藤原精吾弁護士から「国内人権機関」の意義や実際を学び、子ども、女性、障害の各条約体の取り組み状況を確認し、領域を超えての共同の運動の必要性を確認した。

 また、2025年秋に国連の障害者権利委員会委員として活躍している弁護士・田門浩さんの報告を聞く会を日本障害フォーラム(JDF)と共同開催した。また、障害者権利条約の重要性と重ねながら、JDFの障害者基本法改正案を学び、意見交換を行なった。2026年度にはJDFと協力し、障害者基本法改正に向けて国への働きかけを行なっていく。合わせて国内人権機関の必要性を多くの人たちと共有し、他の領域との幅広い連帯を進めていく。

3.災害と障害のある人
 能登半島地震から2年余りが経過し、JDF能登支援センターの活動も一つの区切りを迎えた。しかし、移動の困難や人手不足の深刻さが改善しているわけではなく、引き続き障害のある人や障害関係事業所の状況を把握しつつ、JDFと共に必要な支援を行なっていく。

東日本大震災から15年の歳月がたった。多くの命が奪われ、震災関連死も多く、忘れてはならないのが「障害のある人の死亡率が全住民の死亡率の2倍」だったという事実だ。「2倍」の不利益を解消するために、障害者権利条約に沿った新たな震災対策を急がなければならない。

4.障害のある人の権利擁護に向けた取り組み
 障害関連施策の動向をつかみながら、制度の谷間に置かれる人たちのことも視野に入れ、声明/要望書を発出していく。障害のある人や家族の実態やニーズに添いつつ、看過できない出来事に対し、問題提起し、必要に応じて国等の各省庁との話し合いも行う。

1)優生保護法問題への取り組み
 最も優先すべきことは、優生保護法の被害にあった人たちの補償を進めていくことである。国との基本合意書に基づく定期協議や検証会議にJDも積極的に参加し、周知や学習の機会を設けていく。同時に「すべての人の社会」で継続的にこの問題を伝え続ける。定期協議や検証会議の検討を注視し、再び同じ過ちを犯さないために国内人権機関の設置に向けた運動や記録の保存や資料館の設立など、JDとしても議論を重ね、問題提起していく。

2)障害のある人の投票バリアフリーと合理的配慮を求める取り組み
 2026年1月に突然衆議院が解散となり、短期日で総選挙が行われることになった。投票バリアフリーを目指すプロジェクトチームでは、緊急に1月20日に資料「改善求める230の声・願い 投票バリアフリー 実態調査から」を携えて、「障害者の投票等に対する要請書」に基づいて総務省に申し入れを行なった。1月22日には記者会見し、NHKを始め多くのメディアに取り上げられた。改善がみられる自治体がある一方でまだまだ課題を残す自治体も多い。2月の総選挙では豪雪の地域では選挙に行くこと自体が困難だったという声も寄せられた。JDでは衆議院選後、引き続き、投票環境バリアフリーのアンケート2026調査を実施しており、その結果も踏まえ、投票バリアフリーに関する問題提起や関係省や各政党との対話なども行う。

3)障害者自立支援法(障害者総合支援法)下の問題を明らかにし、改善を求めていく
 2025年は障害者自立支援法違憲訴訟基本合意15年の節目であり、15周年記念フォーラムが開催され、JDも積極的に取り組んだ。この15年の間に障害福祉の現場は大きく変質した。それを象徴するものの一つが規制緩和による営利法人の参入である。ことに営利追求を目的とする企業の参入は、結果的に劣悪な環境の「公認」を許し、障害のある人への不利益を生じさせている。また、報酬の日額払いへの切り替えと、職員配置の常勤換算方式の導入は、経営の不安定さを招き、合わせて職員の非常勤化を一気に加速させた。その結果は惨憺たるものと言えよう。集団としての職員力(支援力)は低下し、慢性的な低賃金状態は一向に改善をみない。こうした状況を反映して、今や「選ばれない職場」になってしまっている。

 「65歳問題」の天海訴訟に代表される障害者総合支援法第7条の介護保険優先原則の問題なども含め、加盟団体とも連携しつつ、問題点を明らかにし、政策提言等を行なっていく。

4)所得保障制度の確立に向けて、幅広く連帯していく
 2025年6月27日の最高裁の「生活保護切り下げは違法」との判決に国は真摯に向き合わず、原告らの意見を無視し、厚労省内に専門家による検討会を設置し、部分的な損害回復にとどまる対応策を決定した。それは最高裁判決の軽視であり、この暴挙を看過できないと原告、弁護団、支援団体は再訴訟を決意し、JDとしてもこの動きを支援していく。また、障害年金の認定をめぐっても問題が明らかになり、障害のある人の不利益を生じさせている。本来厚労省がやるべきことは、国民生活基礎調査に基づき障害のある人の貧困率を算出し、生活実態を明らかにし、障害のある人が家族に依存せず生きられる所得保障政策を構築することであろう。所得保障問題はJDが長年取り組む大きな課題であり、加盟団体、関係団体と連帯しつつ、その抜本的な見直しを求めていく。

5)「谷間の障害」の問題、立ち遅れた領域に関係団体と共に取り組む
 国連の障害者権利委員会は、日本の障害者制度や医療制度が父権主義であり、障害の人権モデルの実現を妨げていると厳しく指摘した。日本の法制度は谷間に置かれる障害を生み出し、必要な支援を受けられない状況を作り出している。障害者権利条約は、障害のある人と障害のない市民との平等を求めている。谷間の障害、あるいは精神科病院への長期入院者の問題など、声のあげづらい人たちの声を聴く努力を重ね、政策提言要望書の提出などを行い、問題の社会化を図っていく。

5.JDの運営について
 JDに求められる社会的な役割を果たすためには、財政的な基盤を安定させていくことが重要である。共に考え、行動する加盟団体を広げていくこと、支え手となっている賛助会員・購読会員・寄附者を広げていくことが求められる。そのためには加盟団体の協力が必須であり、引き続き協力を求めていく。合わせて、加盟団体と協力して若手・女性の活躍の機会や学習の場を設けていく。
賛助会員募集中

2026年5月の活動記録



JDサマーセミナー

津久井やまゆり園事件 十年の節目に 優生思想を乗り越えるために




ささえあい・つながり・わすれない

能登半島支援の現状と展望

生田目 充(難民を助ける会(AAR Japan))


世界情勢

シエラレオネの障害者事情

Kalie Marah(ティネイ・インターナショナル・スクール元講師)




新連載 国連・高齢者人権条約制定に向けて ⑴

すべての人の人権が保障される社会へ

井上 英夫(金沢大学名誉教授 / 日本高齢期運動サポートセンター理事長)




連載 投票バリアフリー 第12回

知的障害のある人にとっての真の参政権保障をめざして

髙梨 恵子(障害をもつ人の参政権保障連絡会事務局次長)




続連載 赤國幼年記・青春記 プラスエピソード5

ロシア人のメンタリティの源流

古本 聡(翻訳業)




連載 エッセイ 障害・文化・よもやま話

第56回 相模原障害者殺傷事件から10年

荒井 裕樹(早稲田大学文学学術院教授 / 障害者文化論研究者)




トピックス・インフォメーション



いんふぉめーしょん

JD サマーセミナー(7月23日開催)参加申込みフォーム 津久井やまゆり園事件 十年の節目に 優生思想を乗り越えるために




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